エキスパートシステム(Expert System)は、人工知能(AI)の一種で、特定の分野における専門家の知識をコンピュータに組み込み、その知識を用いて問題解決や意思決定を行うシステムです。以下に、エキスパートシステムの詳細とその特徴について説明します。
エキスパートシステムの概要
エキスパートシステムは、特定の専門分野の知識を持ち、専門家のように事象の推論や判断ができるように設計されたコンピュータシステムです。これにより、専門知識のない人でも専門家と同等の問題解決や判断が可能になります。
主な構成要素
エキスパートシステムは、主に以下の2つの部分で構成されています:
- 知識ベース:
- 専門的な知識を含む規則や事実を収集したデータベースです。例えば、「もしAならばB」という形式のルールが蓄積されます。
- 推論エンジン:
- 知識ベースを利用して推論を行い、結論を導き出すプログラムです。推論エンジンは、問題解決処理を行うエキスパートシステムの頭脳ともいえる重要な役割を担っています。
エキスパートシステムの歴史
- 初期のシステム:
- 1965年に開発された「Dendral」は、化学分析における分子構造の推定を行うエキスパートシステムで、エキスパートシステムの先駆けとなりました。
- 1972年に開発された「Mycin」は、細菌感染症の診断と治療に関する助言を提供するシステムで、エキスパートシステムの認知度を高めました。
- 第二次AIブーム:
- 1980年代には、エキスパートシステムが商業的に広く利用されるようになりました。多くの企業が日常業務にエキスパートシステムを導入し、特定の分野での問題解決に活用しました。
- 現代のエキスパートシステム:
- 機械学習やディープラーニングの進展により、エキスパートシステムはさらに進化しました。例えば、IBMのWatsonは、自然言語を解釈し、蓄積したデータを基に仮説を立てて評価・判断を行うシステムです。
エキスパートシステムの課題
- 知識獲得のボトルネック:
- 専門家の知識をシステムに組み込むためには、膨大なデータを収集し、ルール化する必要があります。これには多大なコストと時間がかかります。
- 柔軟性の欠如:
- エキスパートシステムは特定のタスクに特化しており、新しい状況や環境の変化に適応することが難しいです。
- 知識の管理:
- 知識やルールの数が増えることで矛盾が生じ、一貫性を保つことが難しくなります。また、システムの維持管理にも多大な労力が必要です。
エキスパートシステムの応用例
- 医療分野:
- Mycinのように、細菌感染症の診断や治療に関する助言を提供するシステムが開発されています。
- 金融分野:
- クレジットリスクの評価や投資戦略の立案にエキスパートシステムが利用されています。
- 製造業:
- 製造プロセスの最適化や故障診断にエキスパートシステムが活用されています。
まとめ
エキスパートシステムは、特定の分野における専門家の知識をコンピュータに組み込み、その知識を用いて問題解決や意思決定を行うシステムです。知識ベースと推論エンジンを組み合わせることで、専門知識のない人でも専門家と同等の判断が可能になります。エキスパートシステムは、医療、金融、製造業などさまざまな分野で応用されていますが、知識獲得のボトルネックや柔軟性の欠如などの課題も存在します。