不正アクセス禁止法(正式名称:不正アクセス行為の禁止等に関する法律)は、コンピュータシステムに対する不正なアクセスを禁止し、これを処罰するための法律です。この法律は、情報化社会におけるコンピュータの安全性を確保し、サイバー犯罪を防止することを目的としています。
経緯
不正アクセス禁止法は、1990年代後半にインターネットの急速な普及に伴い、不正アクセスによる被害が増加したことを受けて制定されました。1997年に警察庁が不正アクセス対策に関する研究会を設置し、法整備の必要性を提言しました。その後、1998年に不正アクセス禁止法案が国会に提出され、1999年8月に施行されました。
法律の主な条項
- 目的(第1条):
- 不正アクセス行為を禁止し、これについての罰則及びその再発防止のための措置を定めることにより、電子計算機に係る犯罪の防止及び電気通信に関する秩序の維持を図ることを目的としています。
- 定義(第2条):
- アクセス管理者、識別符号、アクセス制御機能、不正アクセス行為などの定義が記載されています。
- 不正アクセス行為の禁止(第3条):
- 何人も、不正アクセス行為をしてはならないと規定されています。
- 他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止(第4条):
- 不正アクセス行為の用に供する目的で、他人の識別符号を取得してはならないと規定されています。
- 不正アクセス行為を助長する行為の禁止(第5条):
- 他人の識別符号を提供する行為を禁止しています。
- 罰則(第11条、第12条):
- 不正アクセス行為を行った者は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
法律が適用される事例
- モバイル決済サービスへの不正アクセス:
- 大手企業が展開するモバイル決済サービスに対する不正アクセスや不正使用の被害があり、サービス提供中止に追い込まれた事例があります。
- 内部犯行による情報窃取:
- 情報システム業務に従事していた従業員が、勤務する企業の保有する個人情報を不正に取得し、懲戒解雇されるとともに、不正アクセス禁止法に違反したとして懲役2年の実刑判決を受けた事例があります。
- インターネットバンキングによる不正送金:
- 他人のインターネットバンキングの口座から不正に現金を送金したとして、逮捕された事例があります。