RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、検索拡張生成の略で、大規模言語モデル(LLM)に外部情報を組み合わせて、より正確で信頼性の高い回答を生成する技術です。
仕組み
RAGは以下の2つのフェーズで構成されます:
- 検索フェーズ(Retrieval Phase):ユーザーの質問に対して、外部情報を検索し、適切なデータを収集します。
- 生成フェーズ(Generation Phase):検索フェーズで得たデータを基に、LLMが回答を生成します。
具体的なプロセスは以下の通りです:
- ユーザーが質問を入力。
- AIチャットが外部情報を検索し、適したデータを収集。
- 検索結果データを取得。
- 質問と検索結果データを組み合わせてプロンプトを入力。
- LLMが回答を生成し、AIチャットに返答。
- AIチャットが回答をユーザーに出力。
メリット
- 正確な回答:外部情報を参照することで、より正確で信頼性の高い回答が得られます。
- 最新情報の反映:常に最新の情報を検索して反映できるため、ファインチューニングが不要です。
- パーソナライズ:企業固有のデータや専門的な情報を利用して、より実践的な回答が可能です。
デメリット
- 誤った情報のリスク:外部情報が不正確な場合、誤った回答が生成される可能性があります。
- 実装の難しさ:高度な技術力と専門知識が必要であり、実装には手間とコストがかかります。
代表的なシステムやツール
- Microsoft Azure OpenAI Service
- 概要:Microsoft Azure上で提供されるRAGを構築するためのサービス。Azureの強力なインフラを活用して、検索と生成を組み合わせた高度なAIソリューションを提供します。
- 特徴:スケーラビリティが高く、企業のニーズに応じたカスタマイズが可能です。
- Google Colaboratory(Google Colab)
- 概要:Googleが提供するクラウドベースのノートブック環境。データサイエンティストやエンジニアが共同でRAGモデルを開発・実装するのに適しています。
- 特徴:リアルタイムでの共同作業が可能で、データ分析やモデルの改良が容易です。
- NTT東日本のRAGソリューション
- 概要:NTT東日本が提供するRAGソリューション。信頼性の高い外部情報を組み合わせた生成AIソリューションを提供します。
- 特徴:企業固有の知識やデータを活用し、より適切な意思決定支援が可能です。
- Salesforce Marketing Cloud
- 概要:Salesforceが提供するマーケティングオートメーションツール。RAGと連携することで、パーソナライズされたメールやSMSの送信をリアルタイムで行います。
- 特徴:顧客の行動データをリアルタイムで取得し、パーソナライズされた対応を提供します。
- HubSpot
- 概要:マーケティング、セールス、カスタマーサービスの統合プラットフォーム。RAGと連携することで、顧客行動に基づいた高度なパーソナライゼーションを実現します。
- 特徴:リードの管理やキャンペーンの最適化に有効です。
- Marketo
- 概要:Adobeが提供するマーケティングオートメーションツール。RAGと連携することで、リードのスコアリングやキャンペーンの効果測定を行います。
- 特徴:豊富なリード管理機能を持ち、RAGと統合することで高度なパーソナライゼーションが可能です。
- IBM Watson Discovery
- 概要:IBMが提供するAI検索ツール。RAGと連携することで、企業内の膨大なデータから関連情報を検索し、生成AIに活用します。
- 特徴:自然言語処理と機械学習を組み合わせた高度な検索機能を提供します。
- Amazon Kendra
- 概要:Amazon Web Services(AWS)が提供するエンタープライズ向け検索サービス。RAGと連携することで、企業内のドキュメントやデータベースから関連情報を検索します。
- 特徴:高精度な検索結果を提供し、生成AIの精度を向上させます。
- Dify
- 概要:Difyは、プログラミングの知識がなくても誰でも簡単にAIアプリケーションを開発できるオープンソースのプラットフォームです。大規模言語モデル(LLM)を活用し、ノーコードで直感的にAIアプリを構築することができます。
- 特徴:ナレッジベース機能を利用して、企業の内部文書やFAQ、規格情報をデータソースとして登録し、RAGを実装することができます。
RAGは、LLMの弱点を補完し、高精度な回答生成を実現するための強力なツールです。