PMBOK(Project Management Body of Knowledge)第6版におけるPMO(Project Management Office:プロジェクトマネジメントオフィス)は、プロジェクトマネジメントに関連する標準、方針、手順などを確立し、組織内のプロジェクトを支援する部門または機能として定義されています。PMOは、個々のプロジェクトマネージャーをサポートし、組織全体のプロジェクトマネジメント能力を向上させることを目的としています。
PMBOK第6版では、PMOはプロジェクトマネジメントの支援組織の一つとして位置づけられ、組織構造の種類に応じてPMOの形態や権限が異なることが示唆されています。
PMOの主な役割(PMBOK第6版における示唆)
PMBOK第6版では、PMOの具体的な役割は組織やその形態によって多岐にわたるとされていますが、一般的に以下のような役割が挙げられます。
- プロジェクトマネジメント基準と方針の確立:
- プロジェクトマネジメントの方法論、標準、手順、テンプレートなどを開発し、組織全体に適用します。
- プロジェクトのライフサイクル、フェーズ、プロセスに関するガイドラインを提供します。
- 品質基準、リスク管理の手法、コミュニケーション計画のテンプレートなどを整備します。
- プロジェクトマネジメントのサポートとコンサルティング:
- 個々のプロジェクトマネージャーに対して、方法論の適用、ツールの使用、ベストプラクティスの共有などのサポートを提供します。
- プロジェクト計画の作成支援、リスク評価の実施支援、問題解決の助言などを行います。
- プロジェクトマネジメントに関するトレーニングやメンタリングを実施し、組織全体の能力向上を図ります。
- プロジェクト情報の管理と報告:
- 組織全体のプロジェクトの進捗状況、パフォーマンス、リスク、課題などを収集・分析し、経営層やステークホルダーに報告します。
- プロジェクトポートフォリオの管理を支援し、戦略的な意思決定に必要な情報を提供します。
- プロジェクト文書や成果物の管理、知識の共有を促進します。
- リソースの調整と管理:
- 組織内のプロジェクトに必要な人的・物的資源の割り当て、調整、最適化を支援します。
- 複数プロジェクト間でのリソースの競合を解決するための仲介を行います。
- プロジェクト監査と品質保証:
- プロジェクトが組織の標準や手順に従って実施されているかを監査します。
- プロジェクトの品質を評価し、改善のための提言を行います。
PMOの形態(組織構造との関連)
PMBOK第6版では、組織構造に応じてPMOの形態や権限が異なるとされています。これは、PMOが組織内のプロジェクトをどのように支援し、影響を与えるかに影響します。
- 支援型PMO(Supportive PMO):
- 機能: プロジェクトマネージャーに対して、テンプレート、ベストプラクティス、トレーニングへのアクセス、情報や教訓の提供など、コンサルティング的な支援を提供します。
- 権限: PMOの権限は低く、プロジェクトマネージャーに対するコントロールはほとんどありません。
- 組織構造との関連: 機能型組織や弱いマトリクス型組織に多く見られます。
- 管理型PMO(Controlling PMO):
- 機能: 支援に加えて、特定のテンプレートや形式の使用、方法論の準拠、報告義務などをプロジェクトに要求することで、コンプライアンスを重視した管理を行います。
- 権限: 支援型よりも権限は中程度で、プロジェクトマネージャーに対してある程度のコントロールを持ちます。
- 組織構造との関連: バランス型マトリクス型組織に多く見られます。
- 指揮型PMO(Directive PMO):
- 機能: プロジェクトマネジメントの責任を持ち、プロジェクトマネージャーを直接指揮・管理します。PMOがプロジェクトマネージャーを割り当て、プロジェクトの進め方を指示することがあります。
- 権限: 最も高い権限を持ち、プロジェクトマネージャーに対して強いコントロールを持ちます。
- 組織構造との関連: 強いマトリクス型組織やプロジェクト型組織に多く見られます。
PMOのメリット(PMBOK第6版における示唆)
PMBOK第6版では、PMOの導入によるメリットとして、以下のような点が示唆されています。
- プロジェクトマネジメントの標準化と一貫性の向上: 組織全体のプロジェクトマネジメントの品質と効率を高めます。
- ベストプラクティスの共有と学習の促進: 組織内の成功事例や教訓を共有し、プロジェクトチームの学習を促進します。
- リソース管理の効率化: 組織全体のリソースを最適に配分し、有効活用を促進します。
- リスク管理の改善: 組織全体のリスク管理能力を向上させ、個々のプロジェクトのリスク対応を支援します。
- ステークホルダーとのコミュニケーション改善: プロジェクト情報の透明性を高め、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションを促進します。
- プロジェクト成功率の向上: 標準化されたプロセス、ツール、およびサポートにより、プロジェクトの成功率を高めます。
注意点
PMBOK第6版はプロセスベースのアプローチを主体としているため、PMOの役割もプロジェクトマネジメントプロセス全体を支援する視点から語られています。PMBOK第7版では、原則ベースのアプローチとなり、価値提供や成果に重点が置かれているため、PMOの役割もより戦略的で価値創造を支援する方向に進化していると考えられます。
しかし、PMBOK第6版におけるPMOの概念は、組織がプロジェクトマネジメント能力を成熟させ、効率的かつ効果的にプロジェクトを推進するための基盤となる重要な要素であることに変わりはありません。